まぎれもなく浮遊

好きなものも出来ることも多くないです。別名義のnote: https://note.com/toiro_k

強靭な当事者

日曜日。小雨のち晴れ、しかしおうち大好き人間の休日のため関係なし。じっくり本を読んだりここ最近できてなかった読了本の感想をまとめて書いたり、あと昨日買ったBRUTUSを読んで心惹かれた写真家さんについて調べたりスマホゲームを久々に腰を据えてやったり調べ物でChromebookスマホを交互に眺めたりとかもしました。ここぞとばかりにおうち大好き人間っぷりの本領発揮。しかし本読んでてべしゃべしゃに泣いてたところに宅急便が届いたのは参った。モロに泣き顔で応対してしまったことだけ反省してます。そんな日もあるよね。

 

 

今日読み終わった本その1。
『自分に語りかける時も敬語でーー機嫌よく日々を送るための哲学』秋田道夫
みんながちょっとずつ機嫌よく過ごせたら、そして「あなたとあなたの周りに笑顔が増えますように」をみんなが実践できたら、今よりもう少し優しい世界になるんじゃないかなあという考えは夢物語になるんだろうか。私はそうは思わないけど。
ミニマリストの信念めいた言葉に部屋の整頓を促され、ピントの話に俯瞰と客観視の重要性を説かれ、正岡子規のエピソードに勇気をもらう。そんな一冊でした。

 

 

今日読み終わった本その2。
『わかりやすさの罪』武田砂鉄
タイムパフォーマンスを重視する人からしたら、こんなふうに熟考の成果を言葉で出力した一冊はもどかしいと思われるのかもしれない。もしくは回りくどいとか。でも私はこういう「もどかしさ」「回りくどさ」に惹かれるし読みたい。読みやすさとかわかりやすさばかりを重視した無味無臭な流動食みたいな言葉ばかり摂取していると心が枯渇する。
読みながら何度も、去年10月に矢巾町へ観に行ったみちのくプロレスのメインイベントのあの壮絶な一戦を眺める自分の感情を思い出した。応援したいと思う一方で、そうすることが「今」つらい事実に対して追い打ちをかけるんじゃないかとも思ってなにも言えなくなった時のこと。ああいう感情は与えられるものじゃない、自分の内側から湧いてくるものだし少なくとも要約や「わかりやすさ」を重視したものからは生まれ得ない。安直に言葉にしないことと言葉にするために全力を尽くすことは相反するけど両立できると思う。そうありたい。

 

 

今日読んだ本。
『旅する練習』乗代雄介
文庫で再読なので内容から結末まで把握していたのだけど、だからこそ見える景色や得られる気付きがあったし今回読んだほうがずっとずっと好きな作品だと思えた。思えてよかった。何を言うかも大事だけど誰が言うかってこともまた大事で、単行本の帯に「本当に大切なことを見つけて、それに自分を合わせて生きるのって、すっごく楽しい」の台詞が引用されてるんだけど、なんの予備知識もない状態でこれだけ読んだってふーんって感じで頭に入ってこないじゃないですか。でも小説として物語で読んで練習の旅をずっと追ってきて、それを通して語られる言葉は実感をもって染みて心の深いところまで潤すもので。なんかすごく「小説」ならではの達成を目の当たりにしたような気持ちにもなったよ。『わかりやすさの罪』と同時進行で読んでたから余計に思っちゃった。
あとやっぱり乗代さん作品はサリンジャーに関する予備知識があると解像度上がると思うんだ…!柳田國男のこともちゃんと知ったら、また見える景色が変わるんだろうな。