まぎれもなく浮遊

好きなものも出来ることも多くないです。別名義のnote: https://note.com/toiro_k

置いていけない

日曜日。にちよう、まで入力した時に日曜日よりも先に日用品が出てくるわたしのiPhoneちゃん。本日も快晴。午後から友人と会うので早めに出てきてのんびりしております。

昨日は新宿で映画を観てきました。『ライ麦畑の反逆児 ひとりぼっちのサリンジャー』、サリンジャーは国外では一番好きな作家なんですけどその伝記映画が公開されるという事で、知ってから本当に楽しみにしていたやつなのです。とてもとても良かった。サリンジャーが作家を志してから戦争を経て隠遁生活に入るまでを丁寧に表現して頂いてたと思う。大好きな作品の登場人物やエピソードや台詞がうまく挿入されてたのも心躍るポイントだったし、映画内で「マディソン街の反抗」と訳されていた作品がどういう立ち位置の作品だったのかを知れたのも良かった。これ去年発売されたサリンジャーの短編集の収録作品トップバッターなんですよね。粋なことしてくれるぜ新潮モダン・クラシックスさん…。あと観ていて涙が出たのは美しさを目にした事に対する反射だったのだと思う。最後の作品を発表した後に沈黙を守り続けた事に対して外野はいろいろな事を言うけど、名声とかもひっくるめたそういう煩いもの全てを超越したところにいたのだ、それは本当に貴い事だと感じたわけです。序盤で彼の恩師が作家である事について語りかける場面があるのだけど、それを踏まえて作家であり続けたのだと。もちろん映画として成立させるための脚色もあるだろうし、この映画のもとになってるサリンジャーの伝記のような一冊を今年こそ読もうと心に決めました。2019年の課題図書という事にした。

ところでこの作品、都内で公開してるのが新宿と日比谷の2箇所のみという事で初めて行く映画館だったんですが最前列の席とスクリーンの間がかなり空いててとても観やすかったのも良かったですね。いや開演30分前に行ったら残席僅かで選べるのがそういう位置しか無かったゆえの普段なら絶対選ばない最前着席鑑賞なわけです…。選ばないからこそ初めてでしたし字幕映画を映画館で観たのもいつ以来だったんだろう。貴重な一日であった事は間違いない。

 


今日読み終わった本。

・翻訳夜話/村上春樹柴田元幸

タイトルに翻訳って入ってる事で損をしているのでは……と思わなくもない。少なくとも村上春樹さんの『職業としての小説家』が響いた人は絶対読んだ方がいい。他国の言葉を日本語に訳すことを通して、作家としての文体の確立や文章を書く事について語る一冊でもあるのだから。

・笑う月/安部公房

再読したくなっておとといの夜に本屋さんで買ったのだけど昔持ってたのとは違うデザインの表紙になってる(モノクロ写真悪くないけど前のほうが不気味で好きだったな)。個人的には夏目漱石夢十夜』、アントニオ・タブッキ『夢のなかの夢』とあわせて作家が題材にする夢ベスト3みたいなポジションなのです。ベスト3と言いつつ順位は決めてないけども。

 


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上の『翻訳夜話』の感想まではお昼前に書いてました。『笑う月』の感想からは夜。今。今日は半年ぐらいぶりに会った友人とおやつを食べに行ってきました。パークサイドダイナー、1年ぐらいぶりだなって思ってたら前回行ったのはちょうど1年前の今日だったよって友人が教えてくれて偶然すごいなって思ったところです。そんでその1年前に話題に出した本2冊を読んだよって不意打ちで言われたのも嬉しかった。タイムラグを感じさせずに安らげる存在です。ありがたいこと。

夕方ぐらいのニュースで活動休止を知って驚きました。尊重されるべき決断だと思うのと同じだけ、進み続ける事を選んでくれるかけがえのなさを思わずにはいられない。悔いのないようになんて不可能でそれはそれだけ大切で大きな存在だからで、いつか必ず訪れるその日に受ける痛みを抱えて進めるように日々を生きるだけだ。

 

 

 

ようやく守りたいと思えるようになれたのだ。折れてたまるか。