まぎれもなく浮遊

好きなものも出来ることも多くないです。別名義のnote: https://note.com/toiro_k

山本彩2ndアルバム『identity』感想

遅ればせながら全曲通して聴きました。
そしてこの感激をちゃんと残しとこう!って強く思える作品だったので、備忘録めいた個人の感想文です。簡単に。
ちなみに当方、2016年の5月下旬にMステに出演しているところをテレビで見て一目惚れして(本命ミュージシャンの隣に座っている姿が視界に入ってあまりの可愛さに目を奪われました)、そこから追い続けて今に至っている単推し在宅おたくです。知れば知るほど新しい一面に出会えるからどんどん深みにハマる。多彩さがたまらなく魅力的な人です。


01.JOKER
アルバムリード曲。7月頃に長時間の音楽番組で新曲として披露されたのが最初で、出来たばかりだとの発言もあった当時は爽やかで良いメロディだなあこの子やっぱり面白い曲つくるなあ程度の印象だったはずなのに、YouTubeで公開されたMVとあわせて完成したCD音源として聴いたらイントロのドラムの高揚感煽られまくる勇ましい音とストリングスの広がりの相乗効果に一瞬でノックアウトされたやつです。めっちゃ好き。
恋愛よりもっと大きな目線で大切なひとへの想いを歌う一曲とのことで。歌詞が共作なのでどこまで言っていいのか悩ましさがあるけど、あのCメロで「綺麗」って言葉を選ぶセンスが最高だと思った。浄化する人=浄化+erの連想なのかJOKERっていう言葉遊びめいたタイトルがつけられてて、MVはそのトランプとしてのJOKERが(歌詞にはまったく登場しないにもかかわらず)前面に押し出されてて面白い相乗効果が発揮された作品になってます。
[MV] 山本彩 「JOKER」 - YouTube
JOKERのさやかちゃんとQUEENのさやかちゃんの邂逅。シンガーソングライターとアイドルそれぞれの姿なのかな、とかの深読みも楽しい。途中から風が吹いてきて周囲のものものを薙ぎ倒して吹き飛ばしていくのに、歌う二人のさやかちゃんは揺るがずに前に向かって進み続ける。どちらの姿であっても彼女の歌が放つ強さは同じという証左みたいだ。


02.Wings
疾走感に満ちたストリングスが印象的なJOKERからガラッと印象の変わるこの曲が並んでてしょっぱなから振り幅にどきどきさせられます。音楽のジャンルに詳しくなくて申し訳ないけども、48Gで披露されてたとしたらヘッドセットで歌うカッコいいダンスナンバーとして存在感放ってたんだろうなって感じの(どんなだ)。Aメロの気だるげな歌い方からのサビで多用されるきれいな高音が堪らないです。ライブで生歌で聴くのが楽しみな曲。そんで最近バタフライに地味に縁がある気がする個人的に。


03.夢の声
前作『Rainbow』で言うところのメロディみたいな立ち位置の歌だなって思った(七色のフレーズって部分がニクいなあ)。こういう聴く人の背中を押す曲であるのと同時に、歌う本人に真っ直ぐ向かうような歌詞って提供曲の醍醐味ですね。想像だけどなんかこう、夢をひとつずつ現実にするために前に進んでる最中だからこそ、その張本人からはまず出てこない歌詞というか。そういう曲、こういう曲がアルバム全体の世界観を更に押し広げてくれてる。


04.Let's go crazy
出た!タイトル未定だ!!!(4月に開催されたAbemaTV 1周年記念の単発ライブで披露された時はそういう表記でしたよね確か)
さやかちゃんもインタビューでライブを意識して作ったって語ってたし、最初っから最後までのりのりテンションといいライブのテンションを連想させる明快な歌詞といいサビの\イェイ!/の掛け声といいもう本当に盛り上がるための曲。大サビ前の高音の\イェーーーーイ!/なんてライブで生歌ロングトーン聴く時のとんでもない高揚感が今から想像つくもん。
曲自体は確かに楽しいんだけど、CD音源だと前述の大サビ前の高音以外は結構キレイにそつなく歌ってるというか、それがはっちゃけきれてない印象に繋がってるからちょっともったいない気もする。この歌はやっぱりライブで完成するんだろうなあ楽しみだなあ。生歌を聴いた後にCD音源を聴いて自分がどんな感想を抱くのか楽しみだなあ。
ところで全然関係ないんですけど歌詞カード(わたしの手許にあるのは通常盤です)のこの曲のページの写真めっちゃcrazyじゃないですか。開いた瞬間ちょっとドキッとしたよもはやDON'T CALL ME CRAZYだよ(言いたいだけ)。


05.ゆびきり
話し言葉交じりの歌詞も含めてゆったりのんびり聴ける、Let's go crazyとサードマンを繋ぐのにぴったりの歌。でも穏やかな歌声や明るいホーンの存在感に引っ張られそうになるけど、歌詞はお別れしたあとの人とその人への想いを読み取れるんですよね。別れの場面を思い出したりしながら、再会を信じてはいるけど明言はされてない歌詞。それでも進む先が曲調のように明るく感じられるのは「いつかまた会えた時」という信頼のおかげか。NMBに思い入れのある人が聴いたらまた違った感激があるのかなって想像します。


06.サードマン
これもLet's go crazyと同じで、4月の時点で初披露された1曲ですね。ただの自分の知識不足なんですけどさやかちゃんがつけたこの曲名のおかげでサードマンという単語を初めて目にして、語感からなんとなく第三者みたいな意味なのかなっておぼろげに想像してたんです。そんでこのゴツいカタカナの硬めの響きのイメージを最初に受け取ったからこそ、こんなにも穏やかなバラードだったのが意外で驚いた歌でもある。さらっと調べたら超常現象のウェブページがいろいろヒットしたのにもまたびっくり。どこで知ったんだこんな単語。
JOKERにも「君は君でいるんだ」って歌詞が登場するけど、こちらはそれ以上にありのままの君への全肯定が印象的な歌詞だった。1番と2番のAメロでしっかり違う切り口でその全肯定の必然性が語られてるから、優しい歌声とあわせて嫌味なくスッと入ってくる。Let's go crazy同様にライブで聴ける事にものすごく期待してます。


07.どうしてどうして
優しいサードマンと壮大な愛せよのあいだ、アルバム全体の振り幅という意味でも本当にここしかないっていう見事なポジションに収まってる本人いわく「独りよがりな女の子の失恋」の歌。個人的にこの歌におけるいちばんの宝物はGiGSマガジンの「この曲について話をするのが一番恥ずかしい」のくだりのコメントかもしれません。笑。創作物に関する裏話みたいなものってあまり知らずにいるほうが想像の余地があって楽しいと思うのが本音だけど、この歌に関してはこの話聞いて更にいとしさ募ったってやつです。


08.愛せよ
阿久悠さんの未発表作品にいきものがかり水野さんが曲をつけたという事で、アルバム発売前からNHKの特番でもレコーディング風景が大きく取り上げられたりしてましたね。考えてみたらわたしの本命ミュージシャンも曲を先に作ってから歌詞を書くと公言している人達なので、詞先である事をここまで明確に知らされた歌を聴くってのもあんまり無い体験かも(嬉しい)。現代を生きる若者であるさやかちゃんが「若者たちは」とか「すべてを愛せよ」ってそれこそほんとにサードマンめいた俯瞰の目線で歌い上げる。歌詞の重みと曲の魅力の幸せな調和が、歌声の表現力を更に強く引き出してくれてる感じでただただ圧倒的でアルバムの最後に持ってきても全然おかしくないぐらいの壮大な名曲に仕上がってます。収録順が最後だったらそれこそほんとにそれまでの印象全部持ってっちゃいそうな強い歌でもあるのも確かなんだけど。収録順どんなふうに決めたんだろう。


09.何度でも
みんな大好きDREAMS COME TRUEさんの名曲。カバーアルバムが7月に発売されたばっかりだから正直期待してなかったのに、こっちにまで収録していただけてとっても嬉しいです。ストリングス推しのアレンジも伸びやかな歌声もすんごい好き。そんでその伸びやかな歌声と、サビの言葉数の多さに負けないハッキリした歌い方のメリハリが聴いててめっちゃ気持ちいいんです。ドリウタフェスで披露してた時の映像をテレビで放送してたの観たけど生歌がCD音源を凌駕してた事にえらい驚いたよ。何なんだよこの子(好き)。


10.喝采
はい来た最高!!!!阿部真央さんありがとう!!!!!!!!イントロのギターの時点で阿部真央さんの曲だ!ってばっちり分かったから期待募らせてたらこの歌詞にこの曲調、なによりこの歌声この歌い方ですよもう最高最高大好き最高。考えてみたら作詞作曲が阿部真央で喝采なんていうタイトルな時点で察して然るべきだったね、この喧嘩売ってるような真っ直ぐすぎるがゆえの不遜な歌詞。こんなん本人が作詞してたら絶対バカみたいなタイトルつけられたまとめサイトの記事になって物議をかもしてたと思うんですよ阿部真央さんありがとう本当にありがとう。歌が導いてくれたかのような歌声ほんっっっとにカッコいいよう大好きだよう。サビ終わりの無音になってさやかちゃんの声だけになるフレーズが好きすぎる…。サビでファルセットが特徴的に使われてるからこその終盤の地声めいた高音がより切実に響くの堪らない気持ちになる……めっちゃ好き……。
愛せよ・何度でも・喝采のこの提供曲ゾーンの凄まじさ圧倒的なんだけど、曲たちの凄さと同時に山本彩の歌唱力・表現力に度肝抜かれるゾーンでもあるよね。これもまたライブへの期待が募りたおす歌。楽しみすぎる。
そんでこの曲が気に入った人は阿部真央さんの『デッドライン』もぜひ聴いてくれ。さやかちゃん自身もGiGSマガジンのインタビューで挙げてるけど、痛々しさすら感じる迫力がほんとうに衝撃的な歌だから。


11.陸の魚
この曲単体で聴くのも勿論良いんだけど、アルバムの一曲としてこの流れに存在する事がより魅力を深めてると思う。ここまで多彩な提供曲ゾーンが続いたところでこの歌、では改めてさやかちゃんの歌声を存分にご堪能ください!と言わんばかりのシンプルなサウンドとゆったりした曲調が心地良いんです。夜の眠りにつく前に聴きたい感じの穏やかさ。終盤の転調に胸が熱くなって眠気飛ぶかもしれんけど。知らんけど。
そんでアイドルである事とシンガーソングライターの活動を両立させる事について思うことから広がってこの歌詞になった、的な話をどっかで読んだような聞いたような気がするんだけど思い出せないな〜〜〜っていろいろ見てたらみつけた。このあたり http://natalie.mu/music/pp/yamamotosayaka https://www.ytjp.jp/?p=1710 だ。ニュアンスが全然違うからやっぱり本人の言葉で読まなきゃな。そういう聴いてる人に向けたものでなく自分のことを書いてる歌詞で、より多くの人が自分を投影して聴けるようにと魚を題材にしたそう。魚というワードが呼んだように思えるフレーズもあって、こういう歌詞が共作でなく本人名義なのが素直に頼もしいです。


12.春はもうすぐ
いきものがかり水野さん作詞作曲の名バラード。6分近くあるんですよねこの曲。ピアノとストリングスがいい仕事してる聴いてて気持ちのいい歌。わたしが喝采のイントロを聴いた瞬間に阿部真央さんだ!ってピンときたみたいに、いきものがかりさんのファンの方なら曲を聴いてああ水野さんだってひしひし感じるのではないかなあと思う。
歌詞が本人作詞のゆびきりと重なる部分があるのが興味深いです。結論の持って行き方以外にも、こちらは冬から春という別れの季節であるとかあと1番サビのように具体的な情景も含まれてたりして、提供詞と本人作詞の違いがこんなふうにかたちになるんだなあってのも間違いなく堪能ポイントのひとつ。そしてゆびきり同様にアイドルとしての山本彩さんと、彼女が率いるNMB48をずっと応援してきた人にはやっぱりまた違う響き方をするのではないかなと想像します。


13.蛍
春はもうすぐを美しい幕引きとしての最後の曲にする選択もあったと思うんです。でもそうせずに本人作詞作曲の歌で始めて終わらせる、それがidentityを掲げたアルバムにおいて必要な事だったんだろうな。
曲自体の展開も面白いですよね、GiGSマガジンで読んだ作曲についての裏話に結構驚かされました。聴き手の視界に残像を灯してゆらゆらと消えてしまう、そうして曲が終わった後の静寂に美しい余韻を視る。ツアーでこの曲をセットリストのどこで披露するのかにすごく興味があります。
そんでこの歌詞もやっぱり広い意味でのサードマンなんだよなあ。蛍という題材を介した当事者の目線を書きながらも、君が幸せであることが僕にとっての最優先だということ。1曲目のJOKERにも夏が過ぎて秋へと移り変わる時期である事がわかるフレーズがあったし、その対比を楽しめるのも本人作詞ならではですね。


以上!
前作『Rainbow』も良かったけれども、そこからさらに進化した姿を燦然と見せつけてくれたセカンドアルバムでした。曲順がすごい練られてるからぜひともアルバム1枚通して聴きたいし聴いてほしい。本人の作詞作曲スキルの顕著な成長が伺えるうえに、提供曲の数々から引き出された歌うことにおける表現力も存分に発揮されてて耳が幸せです。
まずはもうすぐ始まるホールツアー、そしてこれからの活躍に更に期待が高まる1枚でした。良い作品をありがとうございます。ツアーはNHKホール参戦なので、それまでひと月かけてじっくり聴き込むつもり。